クシュラの奇跡
2007年 12月 03日
この本は、染色体の異常で、生まれつき身体と知能に障害を持ったクシュラという女の子の成長の記録。
身体のアチコチに重い障害を持って生まれたうえに、呼吸にトラブルがあり1時間も寝ていられない、年に何度も危篤状態になる、何度も入院や手術をする、と赤ちゃんの頃から病気との闘いに明け暮れ、さらに、知能的的にも精神遅滞だと、全ての小児科の医師に言われてしまうほど、見た目にも他の赤ちゃんとは違う様相をしていた女の子、クシュラ。
そのクシュラの両親は若くして子供を持った(母親は20歳、父親は21歳)にもかかわらず、医師の言いなりにはならず、子供の可能性を信じた。そして、自宅でも病院でも24時間、誰かがクシュラの世話をするよう態勢をつくり、特にクシュラが赤ちゃんのときにはずっと抱き続け、そして4ヶ月から絵本の読み聞かせを始めた。
その両親の愛情と絵本のお陰で、クシュラは身体のハンディはあったものの、知能面では他の子供と遜色ないほどの発達を見せ、言葉を増やし、そして精神的にも成長をしていった。
母親は、いつも片手にクシュラを、そして片手に絵本を持ちながら、世話を続け、そして10分置きくらいに、クシュラの言ったこと、成長の証になるものをメモしていった。
この絶え間ない刺激は、おそらくクシュラの成長に大きな意味を持っていった。
障害を持って生まれた子供の場合、寝ること、食べることに焦点があてられ、特にずっと寝かされていることがある。特に病院に入院してしまうと、看護婦さん、お医者さんの世話を受けていない時間は、彼らの脳には刺激が無くなってしまう。
肌をさすること。声をかけること、抱き上げること、その全てが子供にとっては脳への刺激になる。、皮膚を通しての物理的な刺激、音や言葉による知能への刺激が、より必要なのではないかと思う。
クシュラの親が諦めない、闘う親だったこと、常に親や親族の誰かがそばにいてくれる態勢を作ったこと。そして、毎日数冊の絵本を読み聞かせたこと。
活字で読めば、簡単だけど、それは両親にとっては並々ならぬ努力の日々だったと思う。
小児科医のいうとおり、施設に入れていたら、いまのクシュラはないと思う。
この本は、絵本の力を知るとともに、親がどれほど子供と関われるのか、その姿勢には、凄みさえ感じてしまう。