秋山木工ー一流の職人への道

テンプルからも徒歩で行ける距離にある秋山木工さん。注文家具を作る工房ですが、日本ではもう珍しくなった丁稚制度をとっている会社でもあります。

秋山木工さんのことは、昨年blogで紹介していたので、少し抜粋すると・・・

家具職人を目指して秋山木工に入所した人は、最初の５年間は「丁稚」の身分。仕事を覚えながら、人徳を高めるための礼儀作法、生活習慣を徹底して仕込まれます。最初は全寮制で入所１年目は女性も頭を剃った丸坊主。携帯も恋愛も禁止です。

秋山社長の人に対する愛情と熱量は半端なく、指導が厳しい分、技術と人間性と社会性が伴った一流の職人が育っています。

秋山木工さん、過去、何度もテレビで特集されていますが、先日2週にわたって、ザ・ノンフィクションという番組で取り上げられました。

前編：ボクらの丁稚物語2023　泣き虫同期の6年間

後編：　　　　　〃　　　 　　ふたりぼっち　夢の行方

＊我が家にはテレビがないので、T'verというアプリで視聴しました。

以前は10人以上いた職人希望の入所も、年々減り、せっかく入所してもすぐ辞めてしまう・・・。なんと、去年は丁稚はたった3人になっていました（その1人も番組制作中に辞めました）。

ここのところ、秋山木工さんではなく、お隣にできた寺子屋、木風心風堂さんにお邪魔することが多かったので、そんなに丁稚が減っていたとは全然気がつかず。

ジュリアンが以前、フランス人が外国語を学ぼうとしたとき、アジアの中では韓国語が人気で、その理由が「字を覚えるのが簡単」だからだと言っていました。

職人の道も外国語習得も、1からコツコツと根気よく学ぶ必要がある、という意味では一緒。人は易きに流れるんですね。そして、すぐに諦める（←私も同じく）。

しかし、秋山社長に怒られても怒鳴られても、辞めず残った2人の丁稚さん。京都大学中退で家具職人を目指す内藤くんと、京都の老舗造園会社の9代目、リーダーシップを学びに修行に入った加藤くん。

決して手先が器用なわけでも、教えられたことをすぐに習得する器用さがなくても、辞めず、秋山社長に食らいついていっただけで、もう、五重マル、💮💮💮をあげたい。すぐに諦めて、辞めていく人が圧倒的なんですから。

秋山社長。先日80歳のお誕生日を迎えられました。80歳になっても人生の情熱は消えず。思いついたことはどんどんやってしまいます。秋山社長のスピードには誰も着いていけず（笑）。日本を1％でも良くする！というのが秋山社長の指針です。

入所したら丁稚は女性も含め全員丸坊主でしたが、この春からは希望者だけになったそうです。

こちらが内藤くん。丁稚が仕込まれるのは技術と人間性。それも、40％が技術で人間性が60％。

丁稚の皆さんは、職人の心得30箇条を暗記。毎日唱えています。他にも、出身、家庭環境、どんな思いで秋山木工に来たのか、将来はどうなりたいのかの自己紹介文を暗記し、来客があれば、秋山社長に呼ばれ、すぐに自己紹介をしなければなりません。しかも、当意即妙。その場で新しい要素を入れて自己紹介をしなければ、秋山社長から喝が入る。話す度胸がつきます。

ちょっと気弱な加藤くん。代々続く京都の造園業を引き継ぐというプレッシャーのなかで、少しずつ成長しています。

丁稚から職人へ昇格した修了式では、2人とも立派に挨拶をしていました。特に、加藤くんがご両親に感謝の言葉を伝えたのは、涙無くしては聞けなかったですー。いま、人前で臆することなく親に感謝の言葉を伝えられるのは、そういないと思う（私も言えない－）。

以前はこんな賑やかだった食卓も、この春まで2人だけでした。

嬉しいことに、この春、4人の新しい見習いさんが入所したそう。期待の新人は15歳！　55歳の方も入所したそうです！

こういうドキュメンタリーが放映されると、直後から、丁稚制度は古いとか、労働法違反だとか、秋山木工さんには、クレームの電話が続くそう。

丁稚もその家族も、厳しい条件は覚悟のうえで入所しているのに、なんで、他人がとやかくいうのか・・・。家具職人、それも並の職人ではなく、一流の家具職人になるためには、9時ー5時の仕事気分では、とてもなれませんー。

辛口ですが、きっとそういうクレームを入れる方は、仕事はライスワーク。仕事も人生も「人並」でいい人なんだと思う。

食べるための仕事をしている人、人並みでいい人に、一流の職人の道をとやかく言わんでほしいと私は思う。秋山社長の人や対する情熱と愛は、本当に半端ないんですから。

ともあれ、「ザ・ノンフィクション」、しばらく見逃し配信をしているようなので、スマホのアプリを利用して、ぜひご覧下さいー。

秋山社長の本もお勧めです。