アメリカ在住のジャーナリスト、エリコ・ロウさんの最新刊。翻訳本ではなく、エリコさんご自身が最新の脳神経科学をもとに書かれています。
目次はこんな感じ
第1章 あなたの脳は、毎日変わり続けている
第2章 脳には自分で治す力がある
第3章 脳を変える力は悪い方にも働く
第4章 脳の健康を守るライフスタイル
第5章 子どもの頭を良くする7つの法則
第6章 瞑想、マインドフルネスは優れた脳トレ
第7章 頭の働きを最適化する賢い頭の使い方
第8章 脳のアンチエイジングの最前線
頭を良くする暮らし方・・・がテーマになっていますから、ある程度の年齢になったら気になるトピックかと思います。
どの章も情報満載でしたが、ここでご紹介するのは第3章から。トラウマについて。
トラウマというのは大きな事故や戦争、レイプといった生命の危機に陥ったときに起こるものだという印象がありますが、最近は、そうではなく、日常の些細な出来事でもトラウマとなり、後年の生活に支障をきたすことがある、ことが分かったそうです。
近年になって認識が深まったのは、そうした人生を変えるきっかけになるようなショック姓トラウマに限らず、人が普通に育ち暮らす過程で起きた体験での怒りや恐れ、悲しみ、また罪悪感や恥の意識といったネガティブな感情も、実は脳の可塑性を促進し、後年になって心身の健康や性格、対人関係の障害を招く根本原因となっているということです。こうしたトラウマは発達性トラウマと呼ばれています。
(中略)
たとえば、ある子どもがアイスクリームを食べながら夕暮れの小道を歩いていて突然横道から現れた白い犬に飛びつかれ、非常に驚き、怖い思いをしたとします。怪我はせずにすみ、その経験自体はやがて忘れてしまったとしても、その体験を構成した様々な要素は「戦うか逃げるか反応」に直結させる重要情報として保存されます。
その影響で、後年になって冷たいものを食べたがらなくなったり、犬の吠える声が苦手になったり、夕方に小道を歩いたり、白いセーターを着た子どもを見るとなんとなく落ち着かなくなったりすることがあるのです。
これは、幼い頃に自分を危険に晒した条件を脳が五感で感じたままのバラバラの情報として潜在意識にしまいこんでいて、少しでも似たような条件が目前に示されると、赤信号として自動的にストレス反応を起こすからです。
人の行動の90%は潜在意識によりコントロールされていると言われますが、その潜在意識には「戦うか逃げるか反応」の引き金となる小さなトラウマ、発達性トラウマが無数に記憶されているのです。
そして脳には可塑性があり、頻繁に使われる脳神経回路ほど発達し強化されるので、脳は過去の出来事を連想させる刺激に対してどんどん敏感になります。
可塑性という言葉は、馴染みがない言葉ですが「外界からの刺激などによって機能的な変化が起き、その刺激がなくなっても、その機能変化が継続してしまう」という意味らしい。
私は以前、キネシオロジストの
雪乃さんのセッションを何度か受けたことがありますが、心の傷として探り当てた1つが、子どもの頃にやってしまった失敗でした。
子どもの頃住んでいた古い家のお風呂は五右衛門風呂で、毎日、薪でお風呂を立てていました。両親が出かけたある日、2人が帰ってきたらすぐにお風呂に入れるようにと、1人でお風呂にお水を溜め、薪で火を熾してお風呂を立てたことがあります。ところが、鋳物のネジ式の重い栓が、子どもの手だとどうもちゃんと締まっていなかったようで、いつの間にかお水がすっかり無くなっており、風呂釜が空焚き状態に。
結局、両親に喜んでもらおうとした行為が、反対に、お風呂が壊れて修理・・・と悲惨なことに。
その出来事が、45年間もずっと心の奥深くでくすぶっていたわけですね。どんなテーマでセッションをしたのかすっかり忘れていますが、これも私の発達性トラウマの1つだったのでしょう。
そして、子ども時代にトラウマ体験があった人は、子ども時代にトラウマ体験がなかった人よりも脳の海馬が18%小さかったという研究報告もあるそうです。また母親と不仲な人は、3歳までに何かの理由で母親と引き離された体験があることが多い・・・。
私の海馬、大丈夫だったのかとチト心配にはなりますが、記憶力があまりよくないのもそのせいか・・・?
心理セラピーやスピリチュアル的なワークでは、その思い出したトラウマ体験を書き換える、新しいストーリーをつくって上書き保存する、といったこともあるようで、私も雪乃さんのセッションで、この風呂釜事件は扱っています。
とはいえ、私は、1つ1つ自分のトラウマを探してセッションするより、圧倒的な愛や神的体験をすることで過去の全てのマイナスだった体験も受入れられるようになってくるんじゃないかなと思ったりします。あるいはパートナーとの素晴らしいセックスでもいいかもしれない。
余談ですが、
『天からのダイヤモンド』を読んだあと、私は幻覚剤についての本を2冊読みました。現在は違法薬物扱いにはなっていますが、幻覚剤を上手に使えば、
「不安障害」「依存症」「うつ病」「末期ガン」の有効な処方となる可能性があります。違法薬物扱いのままにしておくのは、本当にもったいない。
*「幻覚剤は役に立つのか」 ← 幻覚剤研究がどのような歴史を辿ったかが、延々に書かれている部分がありますが、その幻覚剤で人がどのような覚醒体験をしたか、という部分は非常に面白かったです。
ともあれ、脳について知りたい方には、かなりの情報量の本です。