八戸旅行ーもう1つの物語
2023年 03月 01日
今回は祭りだけ個人的に見に来た、はずだったけれど、、恵比寿さん、大黒さん、縄文辺りから青森と出雲の濃いい関係が透けて見えてきていた。そして祭りの空き時間に白鳥を観に行った辺りから雲行きが変わってきた、、、唐突に話は変わります。昔、東山魁夷の「唐招提寺襖絵展」へ行った時のこと。会場に入って行ったら饒舌に話しかけてくる2人のひとが居た。
その名は東山魁夷と鑑真和上。展覧会の主役たち。聞き取れる人が来たっ!って感じか。
左から東山魁夷、右から鑑真和上。サラウンドだ。
「あの〜お気持ちは分かるんですが私は絵に集中したいんです。後でお話し聞きますから。」と断った。唐招提寺から襖絵の依頼を受けた時、東山魁夷は盲目の鑑真和上の目になろうと決意している。中国に行き、鑑真和上が見ることのできなかった風景をスケッチし、襖絵に描いた。唐招提寺の襖絵を描く東山魁夷画伯会場の最後の方に目立たなく飾ってあった一枚のエスキース(*素描、下絵)。これに私は釘付けになった。それは鑑真和上が教えを伝えるため何度も日本に来ようとして船が難破し失敗して死にかけて、ついには失明し、最後のチャンスで遂に九州に辿り着いた時の絵だった。九州の湾に鑑真和上の船が入ってくる輝かしい瞬間を東山魁夷は絵にしているが、それは想像してそのシーンを描いたのでは無かった。「東山魁夷は実際に鑑真和上の船をリアルタイムで見ている!!」と分かったので釘付けになったのでした。
鑑真和上の船を見ている東山魁夷を私がリアルタイムで見ている感じです。3つの時代の別々の時がひとつに重なる。もともと過去現在未来は同時に起こっているので当たり前の事でもある。それは単に私の妄想ではなく、魁夷はエッセイとして本にさりげなく書き記していた。後付けで答え合わせができる仕組み。「あなたの感じていることは本当です」と言われている様だった。そしてそれ以外にも重要な(私にとって)メッセージを伝えられた。そしてこの、青森八戸のえんぶり祭り。
東山魁夷からのアクセスも近年は減っていたのですっかり忘れていたのです。が、八戸のビジネスホテルにチェックインし、フロント横にカフェとライブラリーがあったので何気に覗いてみたら、、、
そこに種差海岸の特集本がありました。たねさし?気になって手に取るとそこには東山魁夷の代表作、「道」が掲載されていました。あの「道」は八戸の海岸にある道だったのだ。久しぶりの登場に不意を突かれる。大好きな絵で、家にも飾っていたし、本物は何度も東京の美術館で見た。この作品は魁夷にとって生きる指針となり、その後の画家人生を決めた大切な絵。「八戸に来た時には、道にまつわる心境や感動を深い感慨を込めて語った」とある。種差海岸、行きたいけど今回はお祭りに来たんだから無理だろうな、、と次の日アテンドしてくれた橘さんに話してみると、「お祭りの休憩時間に種差海岸行けますよ」種差海岸をドライブしながら、魁夷の道を探す。もうすごく昔の話だから無いよね?と思いつつ、魁夷の描いた道のスケッチ、エスキースに重なる場所を探し続けた。現場主義で正確にデッサンしていたから、同じ丘陵の線や「道」と同じ角度のところがあるはず。そんなこんなしていたら、またまた昔の時代にワープしてしまい、魁夷がドキドキしながら昔戦時中に種差海岸で見つけた「道」を探しに来た、ありし日と重なってしまった。探していた道とついに出会った時、魁夷は叫んでいる。今度は「道を探している魁夷」を見ているのではなく、一体化してしまったのでテンション高くなる私。なんたってその瞬間、自分の人生が決まった「道」なのだ。同行の橘さんと娘さん、なおこさんは興味ないので(笑)興奮する私を見て完全に引いている。
「あった‼️」絶対ここ❗️」と車を止めてもらった。そこには東山魁夷の「道」の場所を示す記念碑が建っていた。魁夷直筆で「道」とサインしてある。テンションマックス。ますます引くみんな。
今、ここである人の人生が決まった。そんな場所に立って興奮しない方がおかしい。その人の作品は後世まで人々を魅了し励まし、場を清浄な、正常に戻す役割も果たし続けている。「道」を見つける直前に海岸で出会った八戸の神様。小さな祠だったけど、かつてないくらい優しく慈愛に溢れた、スケールが宇宙レベルの神様でぶっ飛んでいた。ささくれていた胸にその慈悲は深く染み込んだ。魁夷はこの神様にも会っていたのではないか。その直前には普段出会う事がない、白鳥の群れにも遭遇した。白鳥はヤマトタケルの象徴でもある。魁夷はヤマトタケルにも出会っている。色んな点と点が繋がりスパーク。そうなるともう、魁夷がローマのアッピア街道に行った時のことを話さずにはいられない。キリスト教を弾圧していたパウロがキリスト本人と出会い、人生が一転した瞬間を目撃した魁夷。パウロの人生が決まったのも、また道の上だ。
鑑真和上を見ていた魁夷を見ている私。
パウロとキリストを見ていた魁夷を見ている私。
あながち妄想とも言い切れない。私が子どもの時にも実は魁夷と出会っているけれど、長くなるのでこの辺で(すでにめちゃくちゃ長い)(写真撮影:伊藤由美子さん)