8日から始まったソマティック・エナジェティクスのグループセッションとトレーニングクラスは昨日で終了。明日からの湯河原でのリトリートを残すのみとなりました。
グループセッションやトレーニングに集まった皆さんの様子をみるにつけ、カウンセリングや心理療法で何年もかけて自分の心に取り組むのとは別に、身体にアプローチをして、神経系の詰まりを解放することで心の重みを解き放っていく、という方法がもっと広まってもいいんじゃないかなぁと思ったりします。それはソマに限らず、ヨガや武道といったものでもいいわけで・・・。
明日からのリトリートも、本来の自分を取り戻す時間になることでしょう。
しばらく、ソマティック・エナジェティクスの話題が続いていましたが、今日は、毎日代官山に通う電車の中で読んでいた本をご紹介。立花隆さんの『生・死・神秘体験』です。
私は単行本になった1994年に読んでるので、約30年ぶりに手にとりました。年末にNHKであった、立花さんのドキュメンタリーをみて、ひさびさに立花隆さんの本が読みたくなったので・・・。
立花さんが生と死について、様々な方々と対談したその内容が本になっており、どの対談も「うーむ」と唸る会話が満載。このblogを読んで下さっている人は絶対面白いと思う。すでに文庫本も絶版のようなので中古か図書館でゲットしてください。
こんな対談集です。
一 死を語る時代
第一章 臨死体験と宗教 [対話者]山折哲雄
第二章 生と死のパラドックス [対話者]荒俣宏
第三章 人間とは何か [対話者]河合雅雄+養老孟司
二 臨死体験が意味するもの
第四章 魂は何を見たか [対話者]遠藤周作
第五章 臨死体験が意味するもの[対話者]カール・ベッカー
第六章 一瞬に永遠を聴く モーツァルトと神秘体験[対話者]河合隼雄
三 生と死の境界
第七章 生命への実感[対話者]岡田節人
第八章 天命なき時代 生と死の操作はどこまで許されるか[対話者]遠藤周作
第九章 死の輪郭線 脳死と臨床医学の知[対話者]中川米造+中村雄二郎
この本の中からblogで紹介するのは、本の最後にあった、対談内の用語解説から・・・。人はなかなか死ねない、という一例として、立花さんがお話された実例です。
1984年、釧路湿原の雑木林で男性が断食をすることで自殺をしました。その方は、文章が書けなくなるまで、断食によって死に至っている自分の状態を克明に日記に書き残しました。
その方の遺体が見つかったときには、生前163センチあった身長が150.5センチに、体重は30キロに減っていたそうです。その男性が記していた日記の最後の8日間は下記のとおり。
10月11日(火) 断食57日目
生きている。辛い、怠い、疲れ。乱。今日も天候が悪い1日に成る様だ。右から左、徐々に動かし躰の痛みを助けている姿、見るに耐えぬ。死ぬことは自己の自由にならない事と知った。苦しい1日が始まる。日中、思いもしない天気に成り、温暖。見れば見る程、見苦しい。髑髏と心臓だけが生きて居る様だ。
10月12日(水) 断食58日目
寒かった。生きている。仲々生から釈放の気配なし。直接の死の導きは心臓麻痺。脳貧血。凍死か。
10月13日(木) 断食59日目
(中略)
10月14日(金) 断食60日目
断食60日目に到って仕舞い、頭痛、胸が苦しい。はき気がする。全身から何かを全部抜かれた様だ。脱力。寒気、はき気、目まい、苦しい・・・。
10月15日(土) 断食61日目
ただ苦しい。
10月16日(日) 断食62日目
生死を行ったり来たり。唯々苦しい。
10月17日(月) 断食63日目
苦しい。
10月18日(火) 断食64日目
生きてる。
10月18日~22日、○識半鈍以后記せず
釧路の10月はもうかなり寒い。その冷たい雑木林で死ぬために食と水を断った。身体はどんどん衰弱する。しかし、なかなか死なない・・・。身長が13センチも縮み、体重も20キロ以上減ったのにまだ命は続いている。。。断食開始から60日経ってもまだ生きている・・・。
もしかしたら、この男性が「死ぬために断食をした」ということも、かえってなかなか死ねなかった一因かもしれません。「このまま食べられなかったらどうしよう、このまま餓え死んだらどうしよう」という不安や心配、ストレスは全くないわけですから。肉体的な痛みや不快感は増大していったとしても。
食べ物を食べないと、水を飲まないと私たちは死んでしまうと教わってきましたが、食や水を断っても、人がこんなに死なないものなのかと、身体が持つ生命力に驚きます。
鍼灸師の森美智代さんは、毎日青汁1杯で20年もお元気でご活躍です。カロリー計算から考えると、とても生きてはいけないとされるカロリーですが。
ウクライナ戦争を機に、世界的な食糧危機が始まると言われていますが、人は、何も食べなくても水も飲まなくても、寒いなかでも68日間は生きられる、生きてしまう生命力があるなら、そんなにジタバタしなくても大丈夫ですね。
・・・しかし、特にヨガや宗教的な修行をしない人であっても、そして、死を望みながらも、食と水も断って68日間も生き続ける、生き続けてしまう肉体の力、生命の力って、何なんでしょう。災害が起こって、例えば、がれきの下で動けなくなった人が1ヶ月以上生きていたという記録はほとんどないと思うのですが。。。
死の訪れを待っていたこの男性の最後の言葉が「生きてる」というのも衝撃です。