エマーソン『自己信頼』
2022年 09月 26日
心が素直で、神の知恵をすべて受け入れるとき、古いものはすべて消し去る。手法も教師も教科書も寺院もーーすべてが崩れ落ちる。心は今を生き、過去と未来を飲み込んで現在へと取り込む。心とつながることによって、すべてが等しく聖なるものとなる。あらゆるものは根源の力によって万物の中心への溶け込み、そうした宇宙規模の奇跡が起きる中で、個々の小さな奇跡はすべて消え去る。(中略)バラはあるがままのバラであり、今ここで神とともにあるのだ。バラには過去も現在もない。バラという存在があるだけで、その時々において完璧だ。
魂は旅人ではない。賢い人は家にとどまる。ときには、必要に迫られ義務が生じて、家を出たり、外国に足を運んだりすることもあるが、そんなときでも彼の魂は家にいる。(中略)芸術や学問を追究したり、良いことをするために世界を巡ることを、やみくもに非難するつもりはない。自分の家を第一に思っているかぎり、あるいは海外へ行く目的が自分の知識より優れたものを見つけようというものではないかぎり。楽しみのために、自分の持っていない何かを得るために旅行する者は、自分から逃げている。そんな人間は古いものに囲まれて、若いうちから年老いてしまう。(中略) 都市という廃墟に自分という廃墟を持ち込んだだけのことなのだ。
自分にこだわれ。人まねなどしてはいけない。一生をかけて自分を磨き、力をつけていけば、天から授かった才能がいつか輝くときがある。しかし、他人の能力を借りてしまえば、あなたが手にするのはその場しのぎのもので、半分も自分のものにならない。その人が最高に力を発揮できるものは何かーーそれを教えられるのは世界を創造した神だけだ。実際にやってみるまでは、誰もそれを知らないし、知ることもできない。シェークスピアを教え育てることのできる教師がどこにいるだろうか? フランクリンを、ワシントンを、ベーコンを、ニュートンを教え導くことのできる教師がどこにいるだろうか?偉大なる人物はみな唯一無二の存在だ。スキピオのスキピオたるゆえんは、まさに人から借りられなかったところにこそある。どんなにシェークスピアを研究してもシェークスピアになることは出来ない。自分がなすべきことをしよう。