今年の元旦、私はNetflixのクィア・アイを見るのと本を読むのに費やしていたんですが、読んでいた1冊は『「わかりあえない」を越える』でした。
NVC(非暴力コミュニケーション)を提唱したマーシャル・ローゼンバーグ博士の著作です。
この本の原題は「Speak Peace In a world of conflict ~What you say next will change your world」。対立のなかで平和的に話す、あなたが次にいう言葉があなたの世界を変える・・・。そんなタイトルです。
NVCを学ぶ人々の間では長く翻訳を待ち望まれていた1冊で、私は、この英語の原本を使ってNVCを学ぶクラスに昨年は参加していました。
マーシャル博士は、NVCを教えるだけではなく、世界中で起こっている対立の場面に呼ばれ、その関係の仲裁、修復のサポートをする、ということもされていました。親子、夫婦、親族や友人間の争い、社内の諍い、民族間の闘争、宗教の違いによる対立、国家間の争い、凶悪犯と被害者、ギャング同士の争い等々、血を血で洗うような、一触即発の現場に博士は立ち会っています。
その経験もこの本にはいくつも紹介されています。それは本で読んでいただくとして、このblogでは、「謝罪」について書かれた部分をご紹介します。
他者からひどいことをされた人と私が会うときに、修復的正義を実践することもあります。たとえば、その人がレイプされたとします。レイプした方を罰するのではなく、双方が修復的正義の試みに同意したうえで、その実践を始めるのです。(中略)
具体的な仕組みはこうです。まずわたしは、被害を受けた人が、自分の体験した苦しみを表現するのを手助けします。その痛みの多くが、とても、とても深いものです。しかもNVCを知らないので、相手に配慮しながら苦しみを表現する方法も知りません。たとえば、レイプされた女性だったとしたら、相手に痛烈な言葉をぶつけるかもしれません。「あんたなんか死んでしまえ。拷問を受ければいいんだ、このろくでなし」
つぎにわたしは、レイプした側の相手の男性が、相手の苦しみに共感的につながるのを手助けします。相手の苦しみの深さに、ただ耳を傾けるように促すのです。彼らはそうすることに慣れていません。まず謝罪しようとするのです。
「すまなかった、あのときは・・・」 そこでわたしは間に入ります。
「いや、ちょっと待って。さっきわたしが何と言ったか思い出してください。まずは共感してほしいんです。彼女の苦しみの深さを十分に理解していることを、示してほしいんです。彼女の感情とニーズを、伝え返してもらえますか?」
彼にはできません。そこでわたしは「じゃあ、わたしが伝え返しましょう」と言って、彼女の語ったすべてを感情とニーズで翻訳します。そして彼がそれに耳を傾けられるように手助けします。これを通じてレイプされた人は、レイプした人から理解されるということを体験します。
続いてわたしは、レイプした人が自分の行為を嘆く手助けをします。謝罪するのではありません。それだと簡単すぎるからです。
わたしは彼に、自分の内面を探るよう促して、相手の苦しみを目の当たりにしたときに、何を感じるかを見つめる手助けをします。そのためには、自分の心の奥深くに入っていく必要があるのです。それはとてもつらいことですが、癒やしをもたらす痛みなのです。だからわたしは、男性の嘆きを手伝うのです。
当然、女性は、男性が単に謝罪するのではなく、心から嘆いていることを目の当たりにします。そこでわたしは男性に尋ねます。
「あの行為を彼女に対して行ったとき、あなたの内面では何が起きていたのでしょう?」
このように男性が当時の気持ちを感情と二ーズの形で表現する手助けをしたあと、被害を受けた人がそれに共感するように手助けします。ここまでくると、今ここにいる2人は、最初に部屋に入ってきたときとはまるで別人のように変わっているのです。

子供の頃から、誰かに傷つけられたき、その人に「謝って終わり」にされて、モヤモヤした経験はないでしょうか?そのモヤモヤを伝えても「謝ったんだから、いいだろう」と、かえってしつこい自分が悪いように反応されたり。
あるいは反対に誰かを傷つけてしまったときに、今度は自分が「謝って終わり」にしてしまったか。
マーシャルは言っています。「謝罪は簡単すぎる」と。
原書で学んでいたとき、メンバーの誰もがこの言葉に注目しました。わたしも「そうなのよ!」とようやく言葉に出せた気がしました。
共感のない謝罪は、無理矢理、湧き上がる感情を押さえつけ、蓋をさせられた感じです。
大人同士のトラブルでも、相手の気持ちに寄り添ったりわかり合うことなく「謝って終わり」にしてしまいがちですが、謝罪の言葉ではなく、相手の感情に寄り添ってみることで、どんなにその関係性に癒やしが起きてくるでしょう。
NVCは、独特な言い回しがあり、本のなかには、まどろっこしく感じる表現もあります。でも、マーシャルの言葉がすでに、そうなのです。NVCは、知っておいて損はないどころか、知ることでより人間関係を豊かにしてくれるツールになってきます。「わかりあえない」人が身近にいる方はなおさら、ご一読をオススメします。
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