岡本よりたかさんの思い出「天ぷら蕎麦」

自然農、無肥料栽培をされている岡本よりたかさんのFacebookに、不思議な、そして心に響く思い出が投稿されていました。

短編小説のようなお話ですが実話です。きっといつか読み返したくなるだろうなと思ったので、blogで紹介させていただきます。



「天ぷら蕎麦」(長文)

あれから19年が経った。
僕はある時、家と車の鍵を失くした。財布も持たずに外に出て、たまに気晴らしに行く河原に、車で出かけた日のことである。

気晴らしも終わり、家に帰ろうとした時、家と車の鍵が付いた布製のキーホルダーがないことに気づいた。河原のどこかで落としてしまったようだ。寒い晩秋で、日も暮れてしまい、到底見つけられない。家は、最悪窓ガラスを割って入ればいいとは思っていたが、車が動かないことには帰れない。家まで15kmはあるし、帰り道は真っ暗である。それにとても寒い。

困り果てた僕は家に向かって歩き出しては見たものの、空腹もあって近くに灯りのついた家を探してみた。一軒だけ灯りがあった。蕎麦屋である。あれ?こんなところに蕎麦屋があったっけな?と首を傾げながら中に入り、そして事情を話してみた。店主は不憫そうに僕を見てニコリと笑う。そして、天ぷら蕎麦を一杯出してくれ、食べ終わったら家まで車で送ってくれるという。深くお礼を言ったものの、どうも奥さんと揉めてる様子。夫は人が良く、妻は不審がっているという構図だろう。これはマズイ。とりあえず、「ご迷惑なら帰ります」と告げたところ、奥さんの方が引き留めた。そして予想に反して、是非食べてくれと言う。

とりあえずホッとして、むさぼるように蕎麦を食べた。実に美味しかった。涙が出るほどに美味しく、感動した。


岡本よりたかさんの思い出「天ぷら蕎麦」_c0125114_18394238.jpg


食べ終わり、その美味しさを伝え、お礼を言ったあと、店主の奥さんに家まで車で送ってもらった。家に着き、幸いなことに裏窓が空いていたので中に入り、財布からお金を取って、店主の奥さんに渡そうと思ったが、どこを見ても店主の車がない。発車したエンジン音も聞こえないので、キツネにつままれたような気分になった。とりあえずお店に向かいたくも、車がないので、明日の朝行けば良いかと思って諦めた。

翌朝、車の合鍵を持って、歩いて河原に向かい、車に乗り込んで蕎麦屋に向かった。さて、店にたどり着いて驚いた。なんとその蕎麦屋には看板もないし、暖簾もない。窓から見える厨房には布がかかり、テーブルも椅子も片付けられている。困った。もしかすると閉店しているのに無理に蕎麦を作ってくれたのだろうか。
頭の中がぐるぐるしてくる。どこかまでが夢なのか全部夢なのか。とりあえずベルを鳴らし、玄関を叩いてみたが、応答がない。

仕方なく諦めて、河原に鍵を探しに行ったが、その日は残念ながら見つけられなかった。それから1ヶ月半、僕はこのことをすっかり忘れていたのだが、再び河原に行きたくなって、あの蕎麦屋のことを思い出した。そしてもちろん蕎麦屋にも寄ってみたが、やはり店は閉じられたままだった。

諦めて帰ろうとした時、奥さんが出て来て声をかけられた。そして、彼女が話す内容に、僕は胸が熱くなった。僕が鍵を失くして寄ったあの日は、お店の最後の営業日だったらしい。実はご主人は進行性の癌で、あの日の翌日に入院したという。

店じまいをしている時に僕が入ってしまったようだ。なんというタイミングで店に入ってしまったのだろう。

そして奥さんは深く僕に頭を下げ、さらにこう言った。
「夫は、もう味もわからなくなって、蕎麦を作るのは諦めたんです。で、店を閉める決断をしたんですけど、お兄さんが最後に来てくれて、あんなに美味しく食べてくれて…。夫はあの後泣いてました。本当にありがとうございました。」事情は詳しくは分からないけど、僕も何故か目頭が熱くなった。

そして僕は「きっとまた作れますよ、蕎麦、美味しかったですから」と言ってはみたものの、それ以上の言葉を見つけられなかった。

さて、ここからは信じるか信じないかは貴方次第だが、奥さんが頭を下げて家の中に入って行くのを見届けたあと、僕は河原に行って寝転ぶことにした。最近、どうも疲れ気味だし、河原に座り込んで一休みしようとした僕の視線に、キラリと光るものが見えた。そう、失くしたはずの鍵である。僕はその偶然に小躍りしたい気分になった。

そして、その事を蕎麦屋の奥さんに伝えるべく、蕎麦屋に戻ってみた。そして、店の前で僕は凍りついた。蕎麦屋に葬儀の看板が立てられていたのである。

その日の前日に、蕎麦屋のご主人はこの世を去ったらしい。そのご主人が亡くなった翌日、僕は失くしたはずの鍵を見つけた。

僕は、これはきっとご主人からのプレゼントなのだろうと思うことにした。最後の蕎麦を美味しく食べてくれた僕への感謝の気持ちなのだろうと、捉えることにしたのである。

僕は鍵を握りしめて蕎麦屋に入り、ご主人のご遺体の前で手を合わせた。そして見つけた鍵の布製のキーホルダーの部分だけを棺の中に置かせてもらい、頭を下げてその場を去った。

まぁ、単なる偶然で済ませてしまえる程度の話だが、未だにどうしても忘れられない思い出なので、ここに書き残しておこうと思う。

めちゃくちゃ長文に付き合ってくれてありがとう。では、おやすみなさい。


神様なのか天使なのか、ときどき彼らは小粋な演出をしてくれます。

蕎麦屋のご主人にも奥様にも大きなギフトになったのではないでしょうか。あのタイミングで、岡本さんが蕎麦屋に入るためにはいくつもの偶然と選択が必要でした。岡本さんの心に働きかけて動かし、鍵を失くさせ、岡本さん、蕎麦屋のご夫婦が出会うよう調整し、そして再び、岡本さんを河原と蕎麦屋に誘導し…。

こんな出来事が1回でもあると、人はその後の人生、何があっても生きていける気がします。


by hiroshimapop | 2021-12-12 07:18 | 世界は不思議に満ちている

ケイシーグッズ専門店テンプルビューティフルの店長日記


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