ネルソン・マンデラ氏の大統領就任演説の秘密
2010年 04月 06日
我々が最も恐れているもの、
それは自分が無力だということではない。
我々が最も恐れているもの、
それは、自分には計り知れない力がある、ということだ。
我々が最も恐れるもの、
それは我々の光であって、闇ではない。
素晴らしい文章に、思わず、しばし、うーんと、うなってしまいます。
でも、何度か読み返しているうちに、私のなかで何か変だぞっていう違和感を感じ始めました。
ちょっと前に読んだ映画インビクタスの原作には、ネルソン・マンデラ氏の大統領演説を「あまり人に感動を与えるような内容ではなかった」と、すぐさま切って捨てさり、すぐに次の話題に移っていました。
こんなに素晴らしい内容の演説をしたのに、演説の内容すら引用がありませんでした。
もしかしたら、マンデラ氏のボソボソ演説が聞こえなかったのかしら? 言語が違っているからかしら?と英語で書かれた演説をネットで探してみると、不思議なことに紹介されている演説の内容が全く違います。
この文章を大統領就任演説だと紹介してサイトもありましたが、ほとんどのサイトは、全く別の文章を引用しています。
これって何??って、英語コーチのクリスと一緒に探索してみると面白いことが分かりました。
ネルソン・マンデラの公式ホームページにこうあります。
‘Deepest fear’ quote not Mr Mandela’s
Mr Nelson Mandela is an often quoted individual; his inspirational words are often referred to in numerous publications, television and radio broadcasts, and online. However, a quote commonly attributed to Mr Mandela was in fact never uttered by him.
つまり、この演説、就任演説を含め、別の機会でもマンデラ氏は行ったことはないと・・・。
では、この文章はどこからきたからというと、
オリジナルは、奇跡の学習コース、コース・イン・ミラクルのテキストブックともいえるマリアン・ウイリアムソンの「愛への帰還」から。
ところが、あまりの深い愛に満ちあふれた言葉に、多くの方が「これはマンデラ氏の演説にちがいない」と勘違いをしてしまい、それが新たな共通認識へと発展していったようなのです。
私たちが「聖フランシスコの祈り」だと言っている
主よ、わたしを平和の道具とさせてください。
わたしに もたらさせてください……
憎しみのあるところに愛を、
罪のあるところに赦しを・・・
という祈りの言葉も、実は、聖フランシスコが述べた祈りの言葉ではなく、また彼に捧げた祈りでもありません。でも、いつのまにか、人々は、この祈りの言葉を「聖フランシスコの祈り」と呼ぶようになり、今では多くの人がこれを「聖フランシスコが祈ったことば」だと思っています。
マンデラの就任演説にも、同じようなことが起こったんだと思います。この文章は、もとは誰か別の人が書いたにしても、マンデラの生き方や考え方が反映されており、マンデラの精神が含まれている。
だから実際には、就任演説でスピーチしていなくても、マンデラ氏の就任演説として世界中の人が誤解をしたままになっているのです。
ここまで世界中の人が誤解しているのなら、たとえ原作者のウイリアムソンさんが「それは私の文章です!」と主張をしても、すぐにその声は忘れ去られてしまうでしょうね(そんなことは、しないと思いますが・・・)。
マザーテレサの言葉として有名になった逆説の10箇条も、出典を探っていくと、19才の大学生が書いたものでした。
文章が長くなってしまいますが、以前、兄と赤塚高仁さんのコラボ講演会を開催したとき、赤塚さんが講演の最後に「フットプリント(足跡)」という詩を紹介して下さいました。
ある夜、一人の男が夢をみた。
夢の中で彼は海岸を主と歩いていた。
空を横切って彼の人生のそれぞれの場面が
走馬灯のようにかけめぐった。
それぞれの場面で、彼は砂地に2組の足跡が
あることに気がついた。
ひとつは彼自身のもので、もう一つは主のものである。
で始まる一連の美しい詩です。
この講演会が終了した数日後、私は一人の男性からこんなメールをいただきました。
「この詩は、**さんが講演会でよく引用される詩です。彼の詩なのに、それを無断で使用するなんてガッカリです・・・」
私は別の方の講演会で、この詩を聞いたことがありました。
この詩がその講演者の詩かどうかは分からなかったものの、いい詩は、こうやって人から人へと世の中に広まっていく力があり、その感動や伝播力に対し「これは私の詩だから無断で使うな」と言えるものではなく、まして、作者本人が何も言わないのに、一参加者が怒ってもなぁ・・・って思っていました。
それからしばらくして、青山圭秀さんの「祈りの言葉」を読んでいると、まさにこのフットプリントのオリジナル性にまつわる経緯が書かれていました。
この詩は、**さんの詩でも日本人が書いた詩でもありませんでした。
※青山さんの「祈りの言葉」は、ライトフィールドさんで入手可能です。この本も、かつてamazonで数冊買い込んで、友人たちに配った1冊です。
マンデラ氏が大統領就任演説でスピーチしたとされるマリアン・ウイリアムソン氏の文章も、聖フランシスコの祈りの言葉も、そしてフットプリントも、誰か人の心と頭と手を使って生み出されたものですが、ここまで人の魂を揺さぶる言葉というのは、神様が私たちに伝えたいメッセージなんだと思います。
それをあるとき、ある人が、宇宙に漂うそのメッセージと繋がり、私たちに分かるよう言葉にひらいてくださったものなのでしょう。ある有名な作曲家が「作曲なんて簡単。すでに宇宙に存在しているその音楽を、ただ楽譜に書き写せばいいだけだから・・・」と言っていたそうですが、きっとこういった詩や言葉もそうなんだと思います。
だから、これは誰のだ・・・と主張することは、かえって虚しいように思います(もちろん、原作者の人はそれを主張する権利はあります)。
それよりも、何か素晴らしい言葉を聞いたとき、こうやって廻りの人誰もが「あの人ならきっとこう言うよね。あの人らしいよね」って、いい誤解をされるような生き方をしたいものです。
なにか悪口やネガティブな言葉を聞いたときに、たとえそんなことを言ったことがないのに「あの人なら言いかねないよね」って思われるんじゃなくて、「あの人は、こんなこと絶対に言わないよ」って言われるような人でありたいものです。
ちなみに、コース・イン・ミラクルはまだ邦訳がされていませんが、「愛への帰還」はそのエッセンスが満ちあふれている本です。5月の連休に読む本にはいい内容だと思います~。
*コースインミラクルズ(奇跡のコース)は、その後、翻訳出版されました。
我々が最も恐れているもの、
それは自分が無力だということではない。
我々が最も恐れているもの、
それは、自分には計り知れない力がある、ということだ。
我々が最も恐れるもの、
それは我々の光であって、闇ではない。
我々は自分に問いかける。
自分ごときが賢く、美しく、才能にあふれた
素晴らしい人物であろうはずがないではないか?
だが、そうあってはなぜいけない?
あなたは神の子である。
あなたが遠慮をしても世界の役には立たない。
周りの人が気後れしないようにと
あなたが身を縮めることは何の美徳でもない。
我々は、自らの内にある神の栄光を現すために生まれてきたのだ。
そしてそれは限られた人々のものではなく、
すべての人の内にある!
我々が自らの内にある光を輝かせるとき、
無意識のうちに他者に対しても同様のことを許している。
我々が自分の持つ恐れから自らを解放するとき、
我々の存在は同時に他者も解放する。
Our deepest fear is not that we are inadequate.
Our deepest fear is that we are powerful beyond measure.
It is our light, not our darkness, that most frightens us.
We ask ourselves, who am I to be brilliant, gorgeous, talented, and fabulous?
Actually, who are you not to be?
You are a child of God. Your playing small doesn't serve the world.
There's nothing enlightened about shrinking so that other people won't feel insecure around you.
We are all meant to shine, as children do.
We are born to make manifest the glory of God that is within us.
It's not just in some of us, it's in everyone.
And as we let our own light shine, we unconsciously give other people permission to do the same.
As we are liberated from our own fear, our presence automatically liberates others.
by Marianne Williamson