この1週間で読んだ本
2009年 03月 10日
小説家は、フツーの人だったら想像もできないシチュエーションや舞台背景を考え出し、私たちをイリュージョンの世界へと導いてくれますが、そんな稀代の小説家でさえ、手足が不自由で、常に背中に痛みがあり、言語不明瞭な脳性まひの男性が、トップセールスマンとして長年にわたり活躍しつづけている、なんてストーリーは書かないんじゃないでしょうか?
でも、これは小説ではなく真実の物語。いまも現役でセールスマンをしているビル・ポーターの話なんですよね。
不自由な身体をおして仕事をしている脳性まひ患者、の話としてではなく、トップセールスマンになるためにビルが何をしているか、という視点から見ても、彼の仕事ぶりには頭が下がります。ビルはカフスボタンやネクタイを自分でつけることができないから、それはバス停近くのホテルのポーターさんにやってもらっているし、靴ひも、靴磨きの人に、買い物や商品の配達は人の手を借りているけれど、セールスのセンスと根性にかけてはピカイチ。菜食の人に肉タタキ棒を売り、外食しかしない人にブイヨンを売り、まだ戸棚には山ほどビルが売った商品があるのに、またあらたに注文をもらって帰ることができるのです。。。ビルというセールスマンは・・・。
ビルの底抜けに明るい、そしてひょうひょうとしたユーモアには、読んでいてうれしくなってしまいます。たんたんと毎日を大切に生きることで生まれる大きな力を、ビルさんから私は学ばせていただきました。
子宮会議
女優、洞口依子さんが書かれたご自身のガン体験です。
もう20年以上前、「台風クラブ」との2本立てで見た映画「君は裸足の神を見たか」で、私は洞口依子さんの不思議な存在感に圧倒されたのを覚えています。なんとなく不幸そうな、不服そうな表情の似合う、でも笑うとチャーミングな女性。
いずれ子供が欲しいねとご主人と話していた女性にガンが見つかり、子宮と卵巣を全摘出。その一部始終、そして手術後の身体の変化が赤裸々に、すなおな感性で書かれています。
今年で手術から5年ということで、いまお元気で活躍されている姿にホッとしています。
ガンが見つかったとき、医師から提示される3つの選択肢。
手術か、放射線治療か、抗ガン剤治療か。
ここに別の視点の新しい選択肢が生まれ、そして、3年や5年ではなく、20年、30年と長く生きられるような身体になる。そんな新しい身体への取り組み方が医師とともに選択できる世の中になりますようにと願わずにはいられない。