飛鳥遺跡とゾロアスター
2014年 09月 02日
合計1000頁近くにもなる上下巻のかなり骨太の小説で、頁数が多いだけではなく、推理小説というよりは歴史や宗教学の専門書を読んでいるかのよう。さすが博学の松本清張。単なる推理小説では終わりません。主人公の口を借りて、清張さんが飛鳥遺跡をどうとらえているか、その推理と根拠が延々と続くかなり厚みのある内容になっています。
私には読めない漢字があまりにも多いので、目は字を追えてもその文字が脳みその表面をかするだけでまったく中身が頭に入ってきませんが、ともかくも読了まであと少し。ちょっと時間がかかりました・・・。
読めない漢字が多くても、意味わかんなくても、頑張って私が読んでいるのは、飛鳥遺跡が小説の舞台になっているからだけではなく、松本清張氏が飛鳥遺跡はゾロアスター教の影響を受けているのではないかと説き、ゾロアスター教についてもかなり詳細に解説をしているから。
ゾロアスター教、聞いたことあっても、それがどんな宗教なのか、よく知らなかったので、この本を通じて学んでいます・・・。
~この小説に書かれているゾロアスターについての解説部分です(ごく一部)~
(439頁~)
教祖ゾロアスターの名称は「アヴェスター」ではザラトゥシュトラといい、その生存年代は前7世紀~前6世紀が妥当と考えられる。その名の原語は「黄金色の駱駝」または「老駱駝」の意味をもっている。
彼は20歳で隠遁生活に入り、30歳のときにサバランの山頂で天啓を受け、42歳のとき東部イランのヴィシュタースパ王の帰依を得て、この王の保護ご援助によって彼の教説が大いに流布された。教祖77歳のとき、バルクでトゥラーン王アルジャスブの軍隊に襲われて殉難し一生を終わったことになっている。
ゾロアスターの教説は、宇宙における二個の対立する本体である。光明と暗黒、善と悪との上に立ったものである。この二元的な本体はお互いに勝敗を決すべき戦いをしている。光明にして善の神であるアフラ・マズダは一切の善なるものを創造し、暗黒にして悪の神であるアンラ・マイニュは多くの悪なるものを創造して、相互に闘争している。この世の昼夜の交代、生死の現象もおの善と悪の両霊の所作にすぎない。
(403頁~)
紀元前5,6世紀頃、ペルシアにゾロアスターという聖人がいた。ペルシアには拝火の旧俗があったので、彼はとくに善悪二元説を唱え、善神は清浄・光明をいい、悪神は汚濁・暗黒なるをいった。人はよろしく悪を棄て善に就くべきで、暗黒を棄て光明に趨(おもむ)かなければならないとして、火や光をもって至善の神をあらわし、これを崇拝したので拝火教と名づけた。光を拝し、また日月星辰(せいしん)を拝んだので、中国人はその拝天の故に祆(けん)と名づけた。祆は天神の省文だが、天神といわず祆というのは、それが外国の天神だからである。(中略)
紀元226年、波斯(ペルシャ)にササン王朝が興って火祆を国教と定めたため、一時この教えは中央アジアに盛行した。中国では南梁、北魏の間にはじめてこの名が聞え、北朝帝后のなかにはこれを信奉するものもあり、これを胡天といった。651年、大食国(アラビア)が波斯を滅ぼし、中央アジアの祆教徒で東方に移住するものが多くなった。唐初には祆教徒を頗る(すこぶる)優遇したので、両京(長安・洛陽)および諸州にはみな祆祠があった。祆の文字の由来したのは、この時期である。845年、唐の武宗が仏をこわし、外来の諸教を排斥したので火祆も大秦(マニ教)と共にその累を蒙った。武宗が没してその禁がようやくゆるみ、宋のころまで祆祠がなお残存していた。(403頁~)
*漢字の読み方は本文にはついていません
ということは、一時は中国には多くのゾロアスター教教徒がいたってことになります。紀元650年前後というのは、まさに飛鳥時代。天智天皇、天武天皇、持統天皇が中央政権の基盤を創りあげている頃で、中国や朝鮮半島の人々との交流が盛んだった時期。だから日本にゾロアスター教が入り、その影響を受け様々な建造物を作っていたとしても全く不思議ではない。(真言密教の護摩炊きもゾロアスターの影響を受けているとも言われています)
さらにケイシー好きにはたまらないトリビアが1つ。
それは・・・
ケイシーのリーディングによれば、イエス・キリストの前世の1つがゾロアスターの父ゼンドであり、ケイシーはそのゼンドの父ユールト(つまりケイシーはゾロアスターの祖父)。
となると、ゾロアスターは肉体的にはケイシー、イエスの前世と血縁関係にあり、魂レベルでもイエスや、そのまた父親であったケイシーの影響を受けているとも考えられる・・・。
推理を飛躍させると、天智天皇、天武天皇も時代的に、地球の遙か彼方で発生したゾロアスター教を知っており、その影響をなんらか受けて建築物を作っていたとなれば、魂の糸が織りなすタペストリーをほどいていくと、彼らもまたイエスやケイシーと魂のレベルでは繋がっていたってことになりますよね~。
うーん、妄想は拡がる・・・。
ちなみに、チベットで今も残る鳥葬は、ゾロアスター教の影響を受けているともいわれ、ゾロアスター教では火葬は火を穢し、土葬は土を穢すことになるからと人は亡くなると(少なくとも清張氏がイランに取材に行った当時には)鳥葬が行われているそうです。自分の肉体を最後に鳥に布施するという鳥葬は、いっけん残酷に見えますが、肉体にとらわれず自分たちの本体は魂である、という証しのような葬儀方法でもあります。