原発の終焉 (平 安寿子からのメール転記)

友人で作家の平 安寿子から、今回の原発事故についてメールが届きました。

さすが作家。感情的にならず、冷静に、メタの視点から今回の原発事故を見てる。
ブログに転記してもいいと了解を得たので、紹介させていただきます。

ヒロシマ、ナガサキ、フクシマと、書き並べてみたら、この小さな国に3回、都市名を言えば、そこで何が起こったのか世界中の人が分かってしまうほどの原爆、原発事故起こっています。

原発事故の場合、いったん起こってしまうと、その土地、その廻り、その国だけに被害がおさまらず、世界中に(原発という言葉さえ知らないような国の人々、素朴に生きている遊牧の民にさえ)、取り返しのつかない汚染被害を与えてしまうことが、今回の事故の苦い苦い教訓となりました。

ヒロシマ、ナガサキのあと、日本は戦争放棄と非核三原則をうちだしましたが、フクシマのあと、日本は脱原発の国を目指せるか・・・。正念場です。

原発はCO2を出さないクリーンエネルギー、だから今年は原発ルネサンスとアメリカやフランスが打ち出したときに起きた福島第一原発の事故。このタイミングはやはり、神からの警告、いや、むしろ、拡大を止める救いの手なのではないかとさえ思える。

 漏れ出している高濃度汚染水がどこから出ているのかわからない、ということは、わたしはこの地震とは関係なく、以前から施設の下の地下水が汚染されてたまっていたのではないかと思う。でも、地下水の検査なんかしてなかったから、あるいはしていてもこのくらい大丈夫と思っていたかで、見過ごされていた内部の膿が吹き出したということではないか。

福島の事故はそう簡単には収束しない。それでいいのだと思う。原発が事故を起こすと何が起きるか、白日の下にさらけ出された。アメリカやフランスから専門家といわれる人が来てるけど、何もできない。簡単に収まってしまったら、また人間はコントロールできると見くびるから、たっぷり思い知らせてやらねばならないのだ。

 汚染水を海に流した。けど、それが公表されてるのはせめてもよ。原子力空母や潜水艦がたくさん海を往来している。汚染された水がそこからこっそり海中に捨てられている可能性はすごく高い。核のゴミは置き場がない。こっそり海底に捨てられている核のゴミは、絶対にあるはず。核実験は冷戦時代に何度もされてるし、原発は世界中にあるし、核爆弾も。作成過程で出るでしょ、核のゴミ。核実験で散らばった放射性物質が世界中の土壌に残っている、というのも今回聞かされたよ。核大国は、そっちを反省してほしい。

 広島と長崎に原爆が落ちて以来、核爆弾はどこにも落とされていない。それは、被曝の実情を広島と長崎が教えているからだ。そして、原発がどれだけのリスクを抱えているか、福島が世界に知らせた。

今、もっとも戦々恐々としているのは電力会社と原発事業者だ。東電は賠償金のせいで組織解体を余儀なくされるだろうし、原発を推進してきた国も負担をしなければならない。国のお金は我々の税金だから、わたしだってこれからは原発反対の声を上げるよ。世界中の電力会社が、いつ、自分たちに同じことが起きないとも限らないと思うと、安眠できないだろう。もう、「安全です」と保証できる専門家なんか、いなくなるだろうから。

 原発には莫大な金がかかる、あまりにもリスクが大きいとわかったから、投資家たちが逃げていく。この世界はお金の論理で動いているから、もう、誰も原発に投資しなくなるだろう。我が世の春を謳歌しようとしていた原子力業界は、一気に見捨てられる。テレビなんかでも、次のエネルギーの話題になっていて、原発しかないから仕方ないという論調にはなってない。メディアにもネットにも、最初は原発擁護論が出てたけど、すっかり消えたもんね。冷酷な投資家は原発からお金を引き上げて、次の投資先を探していることだろう。 

 核爆弾も原発も、日本が警告ブザーになって、拡大を防いでいる。スリーマイルでもチェルノブイリでもできなかった原発廃止を、フクシマはやる。神様が受難の地に日本を選ぶのは、日本なら苦難を克服できるから。そんな気がする。神がかり過ぎる考えでしょうか。でも、このタイミングと影響力を見ると、単なる偶然とは思えないじゃない?

 人間は原発を作り、放射性物質を発散させまくっている。それは人間全体の罪なんだから、我々も罰を受けよう。もしかしたら、多大なる恩寵で、この程度ですませてもらっているのかもしれないのだから。

 原発事故につながるのは、地震や津波だけじゃないはず。地震も津波も来ない地帯だから大丈夫と思ってたら、「想定外」の事故がまた起きるんじゃないかな。人知(こんな言葉、使いたくないけどね。人間は大馬鹿だもの)の及ばないとても大きな力が、原発の隠された罪を暴きにかかってる気がする。こんなことになってるとは、開発者にもわからなかった「汚染」がある。開発者たちも、隠しているのではなく、わかってなかったんだと思う。だから、大自然が、誰にでもわかるようにしてくれたのよ。この現実の前では、嘘もごまかしもきかない。すべてが目に見えている。すごいことだ。

「地球に優しく」「自然を守ろう」なんて、小賢しい、ちゃんちゃらおかしいと思うよ。地球は、人間に優しくされたり、守ってもらってなんとかなるようなちっぽけなものではない。頭の悪いくそガキがいい気になってたら、どかんと一発張り飛ばす厳しい親なのだ。人間なんかいなくたって、地球はへっちゃらなのだ。むしろ、いないほうがいいのかもしれない。でも、まだ、見捨てられてない。ありがたいことですよ。

 東電や政府や世界の原発業者はこれから責任のなすりあいをするだろうけど、誰かに責任をおっかぶせて、自分たちは関係ないと善人面を決めこむことも、親から見れば卑怯なんじゃないかな。人間がみんなでひとつながりの「子供」なら、みんなでお叱りを受けよう。そう考えると、今回の出来事は「不幸」ではないと思える。前よりましになるきっかけよ。

地球は謝罪なんか求めてないと思うよ。ただ「気づけ」「いい加減にしろ」と言ってる。とりあえずは、電気を大量消費しない生活スタイルでも「大丈夫じゃん」「やれるじゃん」と、首都圏の住民がモデルを作って世界に公表することですな。「原発がないと困る」という大宣伝に洗脳されてたんだから。それこそ「想定外」の電気のいらないグッズ生産者が現れて、新しい「脱原発長者」が出てくるんじゃない? 

21世紀もようやく11年まできて、20世紀の遺物の断捨離に取りかかった。どんな風に変わっていくのか誰にもわからないけど、親に見守られているんだから大丈夫。バカをやったら、ちゃんと叱ってもらえるんだから。



この記事をアップしてたら、横浜でも長い長い横揺れの地震がありました。
東北は、震度6強。この1ヶ月近く、毎日のように放出し続けているのに、あとどれくらい地震のエネルギーが残っているのでしょう。ずれたプレートは、収まりどころがまだ見つからないのでしょうか。余震が続く中でも、他の原発は稼働し続けているんですよね。この阪神淡路地震並みの大きな余震は、「まだ分からないのか」と、それでも原発続行を望む人たちへの更なる警告にように思えてきます。
Commented by れんげ at 2011-04-08 08:14 x
大筋、同感です!
特に「「地球に優しく」「自然を守ろう」なんて、小賢しい、ちゃんちゃらおかしい」、激しく同意です。
私も日本が新しいモデルになれるといいと思います。
Commented by ☆3813 at 2011-04-10 11:16 x
大いに共感しました。
下記の文も、ぜひお読みください。(拡散希望)
『原発はどんなものか』が、よくわかる文です。

http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html
筆者・平井憲夫さんは、原発での現場監督でしたが、白血病で1997年1月逝去。


Commented by 507号 at 2011-04-18 15:30 x
平さんの文章に共感しました。
また、3813さんが載せて下さったHPを読んで自分のあまりの無知に愕然としました。私たち大人は何て事をしてしまったんだろう・・・。拡散されるべきHPです。ありがとうございました。
Commented at 2012-07-27 18:59
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by hiroshimapop | 2011-04-07 23:39 | 日記 | Comments(4)

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